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バルセロナのウイニングカルチャーから学ぶ組織論(全文書き起こし:前編)


本日のテーマは「バルセロナのウイングカルチャーに学ぶ組織論」ということで、

ゲストに高司さんをお呼びしました。先程、お話を聞いたら日本サッカー協会の練習を担当しているということで、現在多岐にわたって活動していますが、

私と高司さんは5年ほど前に岡田武史さんを通じて知り合い、その頃私が持っていたU20のラグビーの合宿に来ていただいたのが交流のきっかけでした。

それでは改めまして、高司さん、自己紹介からよろしくお願いいたします。



(高司)

こんばんは、ご紹介預かりました高司裕也と申します。

中竹さんとの出会いは、FC今治でした(詳細は後述)。

その前はスペインのバルセロナに2008年から14年が終わるまで住んでおり、その後FC今治に入団しました。2015年から19年までを過ごし、はじめはオプティマイゼーション事業部という、本にも出てくる「チームを最適化する」部署におりました。

簡単に言い換えると「チームを強化する」ということを目的にこの名前を付けたんですが、岡田さん(FC今治オーナー 元日本代表監督 岡田武史氏)からも少し分かりにくいという話があり、その後スポーツダイレクターやGMに名前が変遷しながら4年間にわたってチームを強化してきました。結果としては四国リーグ(5部)からJFL(4部)に上がり、3シーズン戦って、今年チームは2位でシーズン半分を折り返しています。

その後バルセロナに戻り、もともとサッカー留学やチームのコーディネートをやっていましたが、5月からは日本サッカー協会にて、海外在住ので日本人やハイブリッド(日本とのハーフ/混血)の若手選手発掘を行うためにヨーロッパを起点に仕事をしていくことになりました。


(中竹)

おそらく皆さんからするとサッカーどっぷりな感じに見えますが、実際高司さんがやっていることというのは、サッカーに限らず、他のスポーツだったり他の組織にほぼ転用できる話なので、今日はぜひ、自分のこと(自分の組織や自分のキャリア)に置き換えるという視点で聞いていただけたら良いかと思います。


(中竹)

(今日のテーマにも関係している)この本の紹介をさせていただくと、これはバルセロナの話なんですが、本を書いたのはダミアン・〜〜〜というイギリス人なんですね。

私自身は楽天の研究所のアドバイザーを務めていて、people and culture RESEARCH 楽天というところなんですが、本腰を入れて「人と文化を研究しよう」というプロジェクトの一環です。実はカルチャーに関する研究ってすごい遅れてるんですよね。

ビジネス視点では、カルチャーってわかりにくいじゃないですか。アカデミックの世界でもだいぶ遅れていて、ここ最近になってきちんとその研究が進んできた分野です。私自身のバックグランド(大学院での専攻)が文化人類学・社会学だったので非常に興味深く感じた反面、(ビジネスに)本当に応用できるのかなと少し疑念もありました。

そこで「Barcelona Way:バルセロナウェイ」しかも「勝ち続けるための文化:ウイニングカルチャー」という本が出版されたので、これはもしかしたら多くの方にとっても役立つテーマなのかなと思い、監修させてもらいました。

実は、この本はスペイン語になってないのでこの本は現地の人も知らないんですね。内容についてはまた後ほどお話しますが、ぜひ皆さんに考えていただきたいのは、これまでスポーツ界は「いかにアスリート/選手が素晴らしいか」「コーチングが素晴らしいか」の二つ、または、「どんな道具/ツールがよいか」という議論が中心でした。

ただ「どんな文化が良いか」はここ1、2年で登場した新しい領域です。なのでぜひ皆さんには「自分たちの組織の文化」と照らし合わせて頂けたらなと思います。

こういった前提の中で、まず高司さんに伺いたいのは、端的に、日本とスペインの大きな違いについてですね。いかがでしょうか?



(高司)

先ほど2008年にスペインに行ったという話をしたんですけれども、まずはじめにバルセロナに行って感じたことは「町とサッカーが一緒になって、時間が流れている」ということです。

例えば日本では、週末のサッカーの試合が行われて、次の日には試合の結果が出てくると思うんですけれども、普段の試合前の月曜日から土曜日までの間は、なかなかニュースにならないと思います。

一方、バルセロナでは、例えば12時くらいには「今日こういう練習が行われた」、次の週末の対戦相手に対して「選手や監督はこういうことを考えてる」と話題になり、試合が終了の1時間後には、その試合についてコメンテーターや元選手たちがテレビの中でディスカッションを行っている。

でそういったことがすごく街の中とか右端の人たちの中にも人々の中にも根付いているのが一番大きな違いだったように感じました。



(中竹)

それを聞くとさすがサッカー大国だなって感じですね。実際にサッカー嫌いな人ってどれくらいいいるんですかね。



(高司)

まああのバルセロナに関して言うと女性の多くは男性がいつもサッカーに行ってしまったので嫌いだっていう人も多いんですけれども(笑)

でも子供達もやっぱり90%以上はあの小学校年代でもボールに触れてるって言うぐらい好きな人は多いんじゃないかなと。嫌いっていう人はそこまでいないかなと。

興味がないっていう人はいるんですけれども嫌いって人はいないと思いますね。



(中竹)

よくサッカーはスペインの文化の一部だって聞きますけど、もうどれぐらい生活に入り込んでいるんですかね。



(高司)

象徴的なエピソードとしては、サッカーにそんなに触れたことがない人が、1992年にバルセロナが旧ヨーロッパチャンピオンズリーグを制覇した時のロナルドクーマンという選手が決めたゴールのことを熱く語ってくるのを体験した時に、日本ではないことだなと感じたことがありました。



(中竹)

そもそもなぜスペインに渡ったのかきっかけや動機はどのような背景があったのですか?



(高司)?

大学ではサッカーをやっていました。

たまたまバイクで交通事故にあってしまいまして、その時にリハビリがてら、プロにはもうなれないなっていう自分がどっかにいたので、リュックサックを背負ってヨーロッパのサッカーを見に行こうかなと

当時行った先はバルサだったんですけれども、レアルマドリードが2000年で銀河系と呼ばれた時期でその時にリュックを背負って行くったのがサンチャゴベルナベウレアルマドリーのスタジアムであったりそれからはカンプ・ノウの横にあるオリンピックスタジアムというのがあるんですけれどもそこでスペイン代表対ポルトガル代表を見て、スペイン中を回って、ロンドンにも行ってマンチェスターユナイテッドみたっていうのがその時の印象ってのがスペインに行くきっかけにもなったのかなと思います。



(中竹)

行って最も印象的なことってありますか?



(高司)

当時はまだユーロがなりかけて、通貨も変わりかけというところだったのですが、とにかく時間がゆっくり流れているということを感じました。

でも街中でやっぱりボールを蹴ってるって言う子供達がすごく見かけて、その頃一緒にボールを故意に入って買って蹴ったりだとか、そんなこともしてはいわゆるストリートがその頃あったとも感じました。



(中竹)

スポーツに対する理解は日本と全く違いますよね。

「バルサのやり方が日本に合うのか」

これは、ここで私たちが答えを出すわけではないですけど「そもそもいかに違うか」ってことをぜひ感じ取って、その上で聞いてほしいなと思います。

そもそも組織論的に言うとですね「組織文化」と「組織風土」と違うんです。なんとなく似ているような言葉ですが、専門的には根本的に違います。

文化が上位概念、わかりやすく言えば、根底にある概念です。

みんなが当たり前だと思っていること=文化です。

今高司さんから話して頂いたことは、もしかしたら、スペインやバルセロナの人たちは聞いても実感が湧かないかもしれない。

サッカーはみんな見るもんでしょ?サッカー嫌いな人っているはずないでしょ?っていう前提で過ごしています。それこそが文化=カルチャーです。

だからこそ、(スペインにおける)高司さんのような「客観的な視点」が文化を考える上で一番大事なことです。

そう考えるとどうでしょう、実際皆さんが感じてらっしゃる「日本における、または皆さんの地域における、皆さんの競技の捉えられ方」はどうでしょうか?

また、他の競技やってない方もいると思いますが「自分の組織の存在価値・あり方」をぜひ考えていただきたいです。

そこが根底であり、それこそがカルチャーについて考える出発点になります。

なので、少し皆さんに考えていただきたいのは、自分たちの組織やスポーツで地域や皆さんのさんの周りでどのように捉えられて、とてもリスペクトされていてみんなから注目されてるのか、はたまた自分たちは一生懸命やっているけれど、誰からもそんなに評価されていないなど、色々あると思いますが、ぜひ皆さんの、バックグラウンドを是非隣の方にアウトプットしてみてください。

自分たちの置かれている環境を他の人に話すと、クリアになってくることがあったりします。そもそも、組織文化というのは言語化ができていないところが文化であるので、自分で自分たちの組織の文化を語るのは非常に大事なプロセスです。僕自身、組織のカルチャーマネジメントをよくやるのですが、自分たちの当たり前としていることは何なのかということを言語化することは非常に難しいです。

私たちSCJがソフトバンク・ホークスのスカウトチームに対して組織文化のワークショップを行った際に、チームのメンバー同士の情報共有が話に上がりました。

そこでまず始めに、自分たちのカルチャーを言語化してもらいました。

すると、「絶え間ない選手の観察」「人とのつながり」「感謝」などいろいろ出てくるんですね。普段は言葉にしないのですが、根底にそういった考えがあったと。

自分たちの中では当たり前になっているので、こうして改めて言語化することが重要ですね。




<FCバルセロナのカルチャー>

(中竹)

前回高司さんとお会いした時に、(FCバルセロナでは)上のチームのゲームだけ見ても文化はわからないんですよ、見えないところで根底的にはびこっている本当のカルチャーは、育成の下部組織なんですね。ここに結構文化が見えたんですよ。

高司さんにアテンドしていただき、練習を見ていたんですが、特に印象的だったのは「ロンド」と呼ばれる練習ですね。練習自体はそれほどうまいということではありませんでした。

ユース世代の選手たちのスキル的には圧倒的に日本のほうが上手だと、現地の人も言っていました。

何がすごかったかというと、たまたま見ていた日に今後契約するかしないかを決める選手が一人来ていて、練習中に途中からコーチが5人ぐらいいたんですが、(コーチたちが)突然指導をやめたんです。

そしてその選手を奥の方からずっと見ているんですね。指導誰もやっていないんです。

そこでひたすら強度な練習を行うんですね。

日本だとおそらくゲーム形式の練習をやると、誰かが介入したり笛を鳴らしたり、色々とやることも多いと思うんですが、誰のコーチングの手も入らず。

私から見ると、試合以上のインテンシティといいますか、本気度です。これをユースの子達がほぼ60分休憩なしで行うんですね。


私、高司さんにも質問させていただいたのですが、

コーチが一切喋らないな中、コーチが見ている中でも、日本でいう「もうちょっとプレッシャーかけろよ」とか、「もう少し本気出せよ」「ここ行け」みたいな選手に対する本気度を高めるようなコーチングは一切なかったですね。

これは高司さんからも聞きましたが、そういうことを言う文化じゃないと。

バルサのユースに行くと、本気でやること当たり前。

ボールに対して当然全力を出しスライディングでたくさん倒れることもあるけれど、その立ち上がり方が見本となるような立ち上がり方でした。

かといって、黙って黙々とやっているかというとそうではなくて会話の数は非常に多かったです。しかも、ただの盛り上げる言葉じゃなくて、ほとんど指示の言葉をほぼ全員しゃべり続けて、コーチがね今日の練習終わりっていうようなそもそも文化。

本気でやれって言ってるようなチームは本気じゃない。

根底にあるのは、バルサで言えば「ボールを必ず奪い取る=ポゼッションサッカー」の精神がある。こういったところがカルチャーの根源なんだと感じました。

高司さん実際はどうですか?指導を色々なところでされていると思いますが?

「本気出せ」といった日本でよくある掛け声って無いと思うのですが?


(高司)

なかなかそういうことを耳にするというのは、すこし少ないんですけれども、今のバルセロナもちろんスペイン国内からも素晴らしい選手たちが集まってきてますし、まさに中竹さんと見たチームからパリサンジェルマンに一人も移籍が決まって、プロ選手としてすでに移籍が決まったというようなチームなんですね。その中で彼ら自身が本気でやらないと、そういう部分を勝ち取っていけないで、手を抜いてしまうことによって自分の明日はないっていうのが、まさにあのバルサの育成の年代のトレーニングなんではないかなと思います。

当然スペイン全体を見渡せば上のレベルもあればそうじゃない、グラスルーツのレベルというものもあるんですが、グラスルーツのレベルに行っても同じレベル同士の子供達が競い合っているで競い合うためにも必ずみんな勝ちたいと思っておりますし、そこで勝利を目指すためにハードワークするということは、あのスペイン全体として根付いている文化なのかなのかなという風に感じます。



(中竹)

ちょうど、その日ですね女子のサッカーも他のチームがアウェーで来ていてミニゲームをやっていました。小学生くらいの選手だったのですが、振る舞いがプロの選手でした。

もうシュート決めてもですねほとんど喜ばず淡々と戻って

ハドル、数人集まって喋る。あれをゲーム中ひたすら繰り返す。コーチが来た時にも基本的にはコーチの話を聞くんですが、自分達から発信していました。私としては非常に衝撃的でしたが、女子もそういうレベルなんでしょうか?



(高司)

まさに女子サッカーがスペインはすごく盛り上がりを見せていてですね、この9月からのシーズンにスペイン協会が20億円っていうお金を女子リーグに投資します。

一部のチームに関しては全試合が放映されて

2部のチームを4試合、好カードに関しては放映されるという風になってますと言ったことで凄く注目は女子サッカーに関しも集まって来なそういう子たちがまた上を目指して頑張ってるのかなと思います。



(中竹)

そのチームにも「本気でやれ」とかね「今頑張れ」みたいな掛け声はほぼありませんでした。特に指導者の方多いと思いますが、実際練習中に「今ここは頑張るんだぞ」「もっとプレッシャーかけろ」みたいな指示は皆さんどれくらい出されますか?練習の殆どをそのコーチングをやっているチームも多いと思うんですよ。ほとんどコーチが見ていない隙に手を抜いてしまう。放っておくと易きに流れる。ここの取り締まりをやるのに、経験上8割以上時間を使ってしまう。しかし、バルサでは我々が8割以上の時間を注いでいるコーチングをやらなくていいんですよ。なぜかというと当たり前だからです。そうすると、テクニカルなことであったり、戦略的なことに時間を使うことができるので、圧倒的に強くなるんです。

ただ、そもそも言わなくてもできるように習慣化されて当たり前になるには相当の年月がかかります。そのくらい「文化」はすぐに転用できて、すぐ馴染むものではありません。

さてここからは、文化を作ることに早くて3年〜5年ほど時間がかかることを踏まえた上で、高司さんがFC今治にて、スペインでの経験をどう展開したかを具体的に聞いていきたいと思います。

それでは高司さん、お願いします。 後編へ



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