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SCJ Conference 2018 開催レポート~B会場~「パラスポーツの魅力と可能性」



ウィルチェアラグビー日本代表アシスタントコーチである三阪氏とウィルチェアーラグビー連盟の代表理事である中竹氏。中から見たパラスポーツ、外から見たパラスポーツ。それぞれの視点から、パラスポーツの秘めた可能性についてお話をいただきました。



プロフィール

三阪 洋行氏

ウィルチェアラグビー元日本代表 / 現日本代表アシスタントコーチ


選手・指導者・普及活動など 障がい者スポーツ界を牽引し続けるアスリート。高校生の時にラグビー練習中の事故で頸椎を損傷し、車椅子生活となる。8ヵ月間の入院生活の後にウィルチェアラグビーと出会い、わずか4年後には最年少で日本代表に選出された。2004年のアテネ大会、2008年の北京大会、2012年のロンドン大会と3大会連続でパラリンピックへ出場。ロンドン大会では副主将を務め、4位入賞という好成績を収める。引退後は日本代表のアシスタントコーチを務め、2016年リオデジャネイロパラリンピックへ出場。日本初となる銅メダル獲得に貢献した。現在は自身の経験を生かし、障がい者への認識・理解を促進する活動に取り組んでいる。



中竹 竜二氏

一般社団法人スポーツコーチングJapan 代表理事/日本ラグビーフットボール協会コーチングディレクター/株式会社TEAMBOX代表取締役


早稲田大学ラグビー蹴球部主将を経験し、レスター大学大学院社会学部修了。

三菱総研でのコンサルタント経験を経て、2006年に早大ラグビー蹴球部監督に就任。同部を2度の大学選手権制覇へ導く。

2010年より日本ラグビー協会コーチングディレクター、2012年よりU20日本代表ヘッドコーチを務める。

2014年、株式会社TEAMBOXを創業し、スポーツマネジメントのエッセンスをビジネス界に紹介した。2016年春には、ラグビー日本代表チーをヘッドコーチ代行として率いる。近年ビジネス界で話題となっている概念「フォロワーシップ」の提唱者。



――突然訪れた体の不自由とウィルチェアーラグビーとの出会い


中竹:来られた方は、おそらくスポーツやコーチをしている方が多いと思いますが、その中でもパラスポーツに関わっている方はいらっしゃいますか?


私は今、ウェルチアラグビー連盟の代表理事をやっています。リオオリンピックでウィルチェアーラグビーの試合を観て不思議に思ったのは、時間がたつほど「あれ?これってパラスポーツだっけ?」という感覚になったこと。最初はパラスポーツと認識して観戦していましたが、徐々に義足や車椅子が当たり前の状態として見えてきました。



私の想いとして、皆さんにとってパラスポーツが、健常者との間にすごく大きな壁がある競技というより、ほぼ同列の競技になるとよいと思っています。そんな想いを込めて、本日は三阪さんに選手として、そしてコーチとしてのキャリアをお話していただければと思います。


三阪:改めましてこんにちは。ご紹介していただきました三阪と申します。よろしくお願いします。

僕は大阪市大阪府生まれ、花園ラグビー場が自宅から10分ほどという場所で、否が応でもラグビーと触れ合う環境で育ちました。


中学で本格的にラグビーを始め、高校になってもこのスポーツが大好きでした。しかし、練習中の事故で首の骨を折って頸髄を損傷し、車椅子生活になりました。そこからウィルチェアーラグビーというスポーツに出会い、パラスポーツの世界に入るわけですが、障がいはスポーツの世界でも切って離せないものです。


障がいとどう向き合っていくのかを「障害受容」と言いますが、この受容をどうしていくかというのが大きなテーマとなっています。高校生の多感な時期にある日突然、自分の体の自由が奪われ、受け入れきれないところがありました。


体が不自由になった時、「何も出来なくなった」「色々なものを失ったな」と思ったんですね。当たり前にやっていたことがとても時間がかかるようになって、これからどうしていこうか、と先が見えなくなりました。


そんな時に、自分が好きだったスポーツで目標を見つけられたことで、少しずつ前を向けるようになりました。スポーツの中で自分と同じ境遇の仲間に出会い、彼らが今まで見えていなかった「一歩先の未来」を映してくれて教えてくれたのです。


障害受容する上で、社会参加できている障がい者は3割、残り7割は在宅作業や家にこもってなかなか外に出られていません。そういう中で、パラスポーツが障がいを持っている人の社会参加のきっかけになるのではないかと思っています。



――パラスポーツの秘めた可能性


中竹:みなさんはパラスポーツ関わったことないと思います。せっかくですので、ぜひ一緒に考えたいと思います。「パラスポーツのコーチになった時に何を重視するか。」、グループで考えてみてください。明日からいきなり「パラスポーツのコーチをやってください」と言われたら難しいですよね。何がわからないのかも含めて考えてみましょう。

(会場内でグループワーク実施)


では、聞いてみましょう。どういう意見が出ましたか?


参加者:パラスポーツでなくても共通していることなのですが、選手一人ひとりがどういったことができるのかできないのか、どういう風にやって楽しいのか楽しくないのかをヒアリングします。


中竹:いいですね。そういう意味では健常者スポーツと変わらないということですね。他はどうですか?


参加者:僕ら全員パラスポーツの経験がなかったので、競技というより障がいの知識を高めないといけないと思いました。


中竹:いいですね、ありがとうございます。こちらもいきましょうか。


参加者: 3つ、話題になりました。1つ目は障がいに対して医学的な知識を得ること。2つ目はどういう環境が必要か。最後はどういう人か人となりを知ること。


中竹:いいですね。パラスポーツの素人が考えたものですが、三阪さんどうですか?


三阪:障がいを差し置いて考えていただけるというのは、逆に僕らが学ばなければいけないと痛感しました。パラを取って「スポーツ」で考えていくことで全体的に各組織や競技団体が向上するのではと思いました。


現状を言えば、オリンピックとパラリンピックの融合、という発想になりがちです。ただ、現場で感じるのは、オリンピックのパッケージを無理やりパラリンピックに充てがおうとするので、どうしても歪みが生まれてしまう。パラスポーツの組織としてうまく構築させるために、今のような障がいを差し置いた意見を融合させていきたいです。



同時にみなさんに障がいに対しての知識をどのように発信して理解をしてもらうかが1つの課題です。


障がいがあるため様々な面でサポートしてもらうことが多いのですが、医学関係の理学療法士やドクターなどの医療的見解を持つ人たちのつながりは狭く、そのため障がいを知らない人にとっては知識不足などの理由で敷居が高いと感じ、結果、パラスポーツへ参加しづらいという状態があると思います。


その課題を超越してやっていきたいところもありますが、やはり障がいは様々なところで体に負担をかけますし、障がいが障害になることがあります。そのための知識をプラスαとして持ってもらうことの重要性を改めて感じました。


中竹:ありがとうございます。今回、ウィルチェアーラグビーと関わり、選手と話して気づいたコーチとしての学びがあります。

「どういう選手が伸びますか?」とよく質問されますが、競技に関わらず共通の答えは「体幹があって軸がある」ということなのです。そのため、ほとんどのコーチは「どうやって体幹を鍛えようか」と考えますが、パラの選手には体幹がありません。


体幹がないスポーツが存在し、アスリートとしてどのようにコーチングをしていこうか、という今までの前提を覆さなくてはいけない、これは相当なチャレンジングなことです。

腹筋の弱い健常者のオリンピアンはいないのです。健常者が一番時間をかけているところである「体幹」が抜けたら人は考えるようになります。そう考えるとパラスポーツには、実は我々がまだ見ていない腹筋以外で競技性を高めるノウハウが相当詰まっているはずだと考えています。



講演を終えて


突然訪れた体の不自由の中、ウィルチェアーラグビーが大きな心の支えになったと三阪さんは語ります。スポーツには単に体力を高めるだけでなく、明日への活力を与えてくれる存在であることを改めて実感しました。パラスポーツの環境は年々改善され、スポーツのプロフェッショナルとして仕事ができる状態になってきたとはいえ、まだまだ組織として成り立っていないというリアルな声もありました。 2020年オリンピック・パラリンピック、そしてその先を見据えて、健常者と障がい者が互いに手を取り合い、知恵を出し合うことが必要なのではないでしょうか。



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